代償
代償とは?
原作 伊岡瞬 「代償」
平凡な家庭の小学生・圭輔は、ある事故をきっかけに遠縁の同級生・達也と暮らすことになり、一転、不幸な境遇に陥る。寿人という友人を得て苦境を脱し、長じて弁護士となった圭輔に、収監された達也から弁護依頼が舞い込んだ。“私は無実の罪で逮捕されました。どうか、お願いです。かつての友情に免じて、私の弁護をしていただけないでしょうか”。裁判を弄ぶ達也、追いつめられた圭輔。事件を調べ始めた寿人は、証言の意外な綻びを見つけ、巧妙に仕組まれた罠をときほどいてゆくが――。衝撃と断罪のクライムサスペンス!
伊岡瞬(いおか・しゅん)
1960年東京生まれ。日本大学法学部卒。広告会社勤務。2005年『いつか、虹の向こうへ』で第25回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をW受賞しデビュー。2014年に刊行した『代償』は第5回山田風太郎賞候補作に選ばれる。著書に『145gの孤独』『瑠璃の雫』『教室に雨は降らない』など。
こんな小栗旬、見た来ない!”弱々しい男”を全身全霊で演じる
これまで実験的な作品にも果敢に挑戦し、さまざまな役を演じてきた小栗だが、『代償』ではさらなる新境地を開拓。“精神の限界まで追い詰められた弱々しい男”の役に挑む!小栗が演じる弁護士・圭輔は少年時代、達也の底知れぬ悪意によって、家族や大切な人たちの命を次々と奪われ、自身もまた人格崩壊寸前に至るような“凄惨な環境”を強いられてきた。そんな壮絶な過去によって強迫性障害を患った上に、今度は達也の弁護を担当するはめに。弁護士として彼を救うのか、それとも…。圭輔は正義と悪の間で揺れに揺れ、ますます追い詰められていく。このかつてない役に、並々ならぬ意欲をたぎらせる小栗。自らの身と心を削りながら、役を追求する小栗の鬼気迫る姿勢が、圭輔と重なり合う時、あなたは“とんでもない表現”を目撃することになるだろう――。
小栗旬、追い詰められる…
小栗が初めて”心を病んだ弱い男”を体現!
悪と正義が入り乱れ、闇が闇を呼ぶ震撼のクライムサスペンスをHuluにて配信
代償の予告動画は、こちら
代償のあらすじ ネタバレ
物語は弁護士の圭輔(小栗旬)の元に、強盗殺人事件の容疑者・達也(高橋努)から、弁護依頼が舞い込むところからスタート。
しかし、」それは圭輔にとって”新たなる悪夢との闘いの幕開け”でもあった。圭輔にとって達也は遠い親戚であり、少年時代に一緒に暮らした友人でもある。だが、その”友人”は家庭崩壊、
近親憎悪、人心操作…あらゆる卑劣な手を使い、かつて圭輔を”不幸のどん底”へと追い詰めたサイコパスだった。
達也の狙いとは何なのか?そしてどんな代償を払ってでも、達也と言う悪魔に立ち向かうと決めた圭輔を待ち受ける運命とは…
第1話「過去」
敏腕弁護士として活躍している奥山圭輔(小栗旬)は、同僚の白石真琴(高梨臨)との交際も順調で平穏な日々を送っていた。ある日、彼に一通の手紙が届く。差出人は強盗殺人事件の容疑者・安藤達也(高橋努)の義母、道子(片岡礼子)だった。文面には達也の弁護を引き受けて欲しいとあり、圭輔は強烈な吐き気と共に凄惨な過去を蘇らせる。圭輔と達也のあいだにある過去の因縁とは・・・。
第2話「正義」
真琴(高梨臨)を守るために達也(高橋努)の弁護を引き受けた圭輔(小栗旬)。無罪にするための材料を探すふりをしながら、達也の犯罪を確証する手立てがないかを思案する。しかし周りからの達也の評判はとても良く、皆口を揃えて彼の無罪を主張するという事態。焦った圭輔は思いもよらぬ行動にでる・・・。
第3話「嘘」
達也(高橋努)の指紋を付けた凶器を犯行の証拠にする企みが失敗し、圭輔(小栗旬)は動揺を隠せないでいた。そんな中、中学の同級生だったジャーナリストの諸田寿人(淵上泰史)から、弁護側から証人喚問する予定の佃紗弓(柳英里紗)が何度か道子(片岡礼子)の店に出入りしていると告げられる。達也と紗弓の関係に不安をぬぐえない圭輔だが、ついに達也の裁判がはじまる・・・。
第4話「愛」
達也(高橋努)と紗弓(柳英里紗)の策略によって、偽証強要の疑いを掛けられてしまった圭輔(小栗旬)。紗弓に中学時代のレイプ事件の加害者としても名を挙げられた彼は報道陣に追われるようになり、事務所の退所を余儀なくされた。圭輔の部屋を訪れた寿人(淵上泰史)は一枚の謄本を圭輔に渡す。そこに書かれていた衝撃の事実とは・・・。一方、達也の魔の手は真琴(高梨臨)にまで迫っており、悲劇が訪れる・・・。
第5話「絆」
慎次郎(石橋凌)が殺害され、すぐに犯人が逮捕されるが、圭輔(小栗旬)は達也(高橋努)が確実に慎次郎の死に関わっていると主張する。だが達也は悲しみに暮れる真琴(高梨臨)に寄り添い、真琴も圭輔と距離をおいてしまう。また、達也に騙されていたと気づいた紗弓(柳英里紗)から、門田(川瀬陽太)が何かを証拠に達也を脅していたと聞かされる。圭輔は寿人と紗弓と協力して達也の数々の罪をあばこうとするのだが、さらなる悲劇が待っていた・・・。
第6話「運命」
寿人(淵上泰史)殺人未遂の容疑で警察に追われる圭輔(小栗旬)。スナック「たっちゃん」では達也(高橋努)と圭輔の義父・吉田肇(平田満)が、達也を説得しようとするが・・・。一方、圭輔の無罪を証明しようと動く真琴(高梨臨)の前に、圭輔が現れる。真琴に達也を断罪するための資料を渡し、自分にはまだやることがあると告げる。圭輔と達也が対峙するとき、戦慄が走る最悪の結末を迎える・・・。
代償の作品概要
原作/脚本
監督/演出
代償のキャスト紹介
代償の感想
Huluオリジナルドラマ「代償」。小栗旬演じる弁護士の奥山圭輔は、元友人の安藤達也(高橋努)によって、人生と精神を破壊された・・・公式サイトには、小栗旬が初めて心を病んだ弱い男を体現!と銘打たれており、各SNSでも放送開始前から話題になっていた作品です。
ドラマは事件の起きた夜の街から始まります。奥山を重要参考人として調査する警察。すでに不穏ですね。
そのころ奥山はどこかの廃墟にいました。
「お前のくだらない遊びで、何人の人を殺した。」
「さぁ・・・」と笑う安藤。この笑い方がすごい・・・本当にくだらない質問をされたといったような笑い。サイコパスに満ち溢れていて背筋が凍りました。
「お前は狂ってる・・・。罪を償ってもらう・・・死ぬんだよ、お前はここで。」そして鉄製の警棒を取り出す奥山・・・
奥山は弁護士として高成績を上げており、数多くの案件が舞い込む人気弁護士です。自分に舞い込んだ弁護は全て引き受けると断言し、むしろ正義感が非常に強く弁護士の鑑であるように感じました。
しかし一通の手紙が奥山の元に届きます。その手紙を見た瞬間、トイレに駆け込み・・・
その手紙は、安藤の母親からでした。達也が事件を起こしたから弁護してほしい、と。
安藤は断言しました。「奥山弁護士は、必ず助けてくれます。」
どうやら、奥山は安藤のことを思い出すと薬を飲まないと精神を病むようです。病気のことは今までバレずにやってこれた。この安息の地を壊されるわけにはいかない・・・
それまでの態度を一変し、奥山は安藤の母からのストーカーのように届く弁護依頼を破り捨てるが、安藤のが一歩上でした・・・悪の手は奥山の恋人である白石真琴(高橋臨)にまで広がり・・・ついに、奥山は言います。「僕に行かせてほしい」と・・・
稀代のサイコパスである安藤の子供時代を演じる若林時英さんの演技が非常に光ります。若林さんは人気ドラマ、「あなたの番です。」にも出演されていました。少年時代の回想シーンでは、奥山の母と接する時の無邪気な少年の顔、そして少年犯罪者としての顔を素晴らしいほどに演じ分けています。
義理の母である安藤道子(片岡礼子)は、少年である安藤に指示をしながら、身の回りの少年少女から金を巻き上げていました。ハムスターに自作の睡眠薬を試している安藤に対し、道子は声をかけます。「あんたってほんと、お金には興味ないのね。」
子供の頃から、安藤は金ではなく人を痛めつけることに喜びを感じていたのですね。睡眠薬の実験だと言っていたのに、ハムスターは血を吐き出し倒れ、その様子をみてにやりと笑う安藤・・・
安藤が奥山の父のたばこを勝手に吸うシーンでは、肺に煙を入れて吐き出し・・・役者の若林さん、どうやって撮影しているんだろう?本当に吸っているのかな?いいのかな・・・と不思議に思いました・・・
第一話では、奥山と安藤の子供時代が主に描かれ、奥山の心に抱える闇の背景が明らかになりました。
お父さんとお母さんが憎い。絆があるから苦しい。それさえなければ・・・過去なんて振り返らなくていい。全部終わったはずなのに、なぜまた付きまとうのか。安藤の出現で、苦しみを思い出し泣く奥山・・・
公式で銘打たれていた奥山の弱さとは、大人になっても両親の位牌の前で嗚咽をこらえ涙できるような、弁護士としてできるだけ多くの人を助けたいというような、心の奥底から湧いている優しさなのだと思います。その優しさにつけこまれてしまった闇が今後どうなっていくのか、「代償」とは一体誰が何を払うのか・・・第一話冒頭のシーンへとどのようにつながっていくのか。
第一話だけでも多くの謎が残されました。サイコサスペンスドラマ、と一言では片づけられない、胸の奥底にある感情を揺さぶるようなドラマです。
安藤の心の弱さ、怯えにいつの間にか感情移入をしてしまい、視聴者の肝を冷やし怯えさせる理由の一つに、稀代の天才的教唆犯として登場する安藤の想像を絶する非情さ、冷酷さ、そしてそれに対する罪悪感のなさがあります。
ソシオパスという言葉をご存じでしょうか?サイコパスと同じく、反社会性パーソナリティ症候群に分類されている社会病室者のことです。ソシオパスが後天的、つまり育った環境等に影響されたものであり、サイコパスは生まれつきその性格を持ち合わせているという違いがあります。
奥山の精神科医である吉田(平田満)は、彼を「反社会的パーソナリティ障害者、いわゆるサイコパスだ。」と断定しています。
安藤は警察に、血液型をAだと告げています。そして、学生時代を共に過ごした奥山自身も、安藤をA型だと思っていました。しかし、ある日、奥山の前に学生時代の友人である諸田(淵上泰史)が現れます。巧妙に本当の顔を隠していた安藤の芯を見抜いていた諸田は、彼の本当の血液型はO型だと言いました。
実は、火事で亡くなった奥山の母の遺体の中にはO型の体液が残されていました。奥山の父親はO型なので問題にはなりませんでしたが、実はその体液を残していたのは安藤でした。すべてを見越し計画した上で、彼は事前にA型であると嘘をついていたのです・・・
安藤は学生時代から、道子に犯罪を要求されていました。しかし、道子が安藤に要求していたのは金のみです。そのような指示は一切出していないにもかかわらず、奥山の母を穢し、家に火をつけ・・・奥山の前で両親の遺骨をばらまき踏みつけ、家族写真を燃やしました。
骨を踏みつけながら、もう両親はいないんだよ。と不思議そうに告げる安藤はまさにサイコパス。ぞっとする瞬間でした。
しかし、義理の父に殴られている時だけは、暴力に怯え、虐待をただじっと受けている少年でした。そして徐々にエスカレートしていく道子の犯罪指示。
しかし、ある日から立場が逆転します。道子は安藤に犯罪の相談を持ち掛けるようになり、安藤は義理の母である道子とも身体の関係を持つようになりました・・・そして、道子は安藤の指示通り犯罪を犯していく。
安藤は、父の暴力や母の犯罪教唆からも自身の犯罪教唆スキルを学んだ、ソシオパスとしての一面も持ち合わせていると言えるでしょう。
そして稀代の犯罪者へと成長していった・・・その両面が学生時代の家族関係を丁寧に表現されることで描かれています。だからこそ、視聴者は安藤が笑うだけで恐ろしく、背筋が凍るような思いを抱くのではないでしょうか。
友人ができた、と笑う学生時代の安藤。その友人こそ、奥山でした。その執着が他人に理解できないようなものだからこそ怖い。奥山をわざと怒らせ、暴力を振るわせ罪悪感を植え付け・・・。いじめられていた奥山に唯一できた友人を暴漢にレイプさせ、傷ついた少女にこう告げます・・・
「俺の痛みに比べたら、お前はいいよな。」
「この痛みは、全部、圭ちゃんのせいだ。これだけでは終わらない。」
果たして、安藤の言う「痛み」とは一体何なのでしょうか。
稀代の天才的犯罪教唆犯として、自分が被告人として逮捕されているにもかかわらず、周りの人間を利用しながら犯罪の糸を蜘蛛の巣のように張り巡らせていく。
そして、奥山は弁護士でありながらも証拠をねつ造し、安藤を有罪にするべく動く。しかし奥山はすでに安藤の蜘蛛の巣の中。いくら探しても、無罪となる証拠しか出てこない・・・そして明らかになっていく、安藤の周囲の人間の正体。
全6話のドラマですが、これ、6話で終わるの?と不思議に思うほど密度が濃く、毎話、「えっ何で?」と声を出してしまうような謎が明らかになる、一気見せざるを得ないサイコサスペンスドラマになっています。
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